六

「うう〜ん…………赤い月の赤は、キムチの赤だって何度も言っているでしょう…………月? 月は空にあるでしょうに…………まったく……むにゃ」
いつもどおりの平和な夜。この日もいつものとおり真夜が、事務所の別室のベッドの下で寝息(寝言)を立てていた。
 しかしその静かな夜が破られるように、突然部屋の扉が大きな音を立てて開く。
「おいマヤ起きろ!」
続いて響いたのは甲高い女の子の声。
「のんきに寝てるんじゃない! 早く起きろって」
「んも〜ぅ……なんなんですか、ファル………もう朝ですかぁ? …折角良い夢見てたのにぃ………ふぁ〜あ…」
「寝言から察するにそれは無いと思うが、兎に角お前の居眠りに付き合っているヒマはどうやらないんだ」
「んむぅ……」
眠い目をこすりながら、マヤが上半身を起こした。近くにおいてあった眼鏡を手探りで探し出し、掛ける。表情は極めて不機嫌である。
「私だって眠いんだがな」
「どうしたんです……?」
「さっさと着替えて準備するんだ。厄介な事になったぞ」
ファルが金色の髪の毛をわしわしとかく。
「チラシに書いてあるはずだがな、危険な依頼はお断り」
「…………まさか、今回もですか……」
「ああ、結局こういう展開だぜ。すぐにでも出発したほうが良い。今さっき依頼人から電話があった」
真夜の不機嫌な表情も既に消えている。
「場所は」
「めぼしはついてる。とりあえず、『風』は持っていったほうがいいだろう」
「むむ…………物騒ですね」
「いつもの事だぜ」
「一番望まない展開ですけどね」
真夜が立ち上がる。ファルがにやりと笑って言った。
「依頼主の父親が、いなくなったそうだ」






 依頼一 6