五

「早い」
薄暗いなかでの声。
「いつかは動くと思っていたけど……これは早い」
あたりは一面の緑である。しかしこの暗さの中では緑と認識できるかどうかも疑わしい。空気が停滞しているかのようなまがまがしい雰囲気が、そこにはあった。
 それを切り開いたように、大きなサークル状の広場があり、その地面には一つの雑草すら生えていない。
 そのサークルの中央に真っ白なチョークで人が一人はいるくらいの大きさの円が描かれていた。幾何学的な模様と五芒星形の形が読み取れる形である。
 その五芒星形の中心に、一つの人影がたたずんでいた。
「こちらもはやくしないと…………」
白いチョークを走らせているのはその人影であった。
 その五芒星形の中心にかがみながら、なにやらぶつぶつと呟いている。
「……儀式中は、この魔法円からは決して出てはいけない…………出てしまえば、術者の安全は保障されなくなる……」
その声は、ある事を再確認している声のように聞こえる。
「悪魔が出現するのは、この魔法円の外にかいた魔法三角形の中」
と言って、自身のいる五芒星形の外に、これまた奇怪な模様のつまった三角形をチョークで描く。
「この中に悪魔がいる状態ならば、術者に背くことはない………………これで、完璧…………」
その人物はそう言うと立ち上がり、自分の描いた図形を、満足げに見下ろした。
 円形の五芒星形の外に、寄り添うように三角形が描かれていた。
 暗い夜の中に、白いチョークの図形だけが妙にはっきりと見える。
「あとは………呪文を唱えるだけ…………ふふふ…………もうすぐ、もうすぐで………………」
そういって、その人物は胸に下げたペンダントのようなものを握り締めた。
 恍惚の笑み。
「まっててね………………」
そして、暗黒の儀式は始まったのであった。






 依頼一 5